デジタル化・AI導入補助金とは?中小企業が知っておくべき活用のポイント
目次
- IT導入補助金が「デジタル化・AI導入補助金」に変わる理由
- 2026年度の主な変更点と継続内容
- 5つの申請枠を理解する
- 補助金を活用する前に押さえておくべきこと
- 申請で失敗しないための実践的なアドバイス
- 補助金申請をスムーズに進めるためのサポート体制
「AIツールを導入したいけれど、費用が心配」「申請書類が複雑そうで、どこから手をつければいいか分からない」。中小企業の経営者から、このような声をよく耳にします。
2026年度から、IT導入補助金は「デジタル化・AI導入補助金」へと名称を変更し、令和7年度補正予算として3,400億円が計上されています。名称変更の背景には、国が中小企業のAI活用を本格的に後押しする姿勢があります。実際、現在の中小企業のAI導入率は約5%にとどまっており、多くの企業がまだデジタル化の恩恵を受けられていません。
株式会社ドラマでは、IT導入補助金の支援事業者として、これまで多くの企業様のデジタル化をサポートしてきました。この記事では、2026年度の補助金制度について、実務に即した視点から分かりやすく解説します。
IT導入補助金が「デジタル化・AI導入補助金」に変わる理由
名称変更に込められた政策の意図
2026年度より、IT導入補助金は正式に「デジタル化・AI導入補助金」へと生まれ変わります。単なる名称変更ではなく、制度の中心テーマが「AI・DX推進」にさらに寄っていくことを示しています。
では、なぜ今このタイミングで名称を変えるのでしょうか。答えは人手不足と生産性向上という、日本経済が直面する課題にあります。最低賃金の引き上げが続く中、人件費の上昇を乗り越えるためには、業務の効率化が不可欠です。
AIやデジタルツールを活用すれば、これまで人の手で行っていた作業を自動化し、限られた人員でも高い生産性を実現できます。政府はこの流れを補助金で後押しすることで、企業の持続的な成長を支援しようとしています。
中小企業が直面する現実
AIという言葉を聞くと「大企業のもの」というイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、今やAIチャットボットによる顧客対応、AI-OCRでの請求書処理、生成AIを使った文章作成など、中小企業でも手軽に使えるツールが増えています。
ただし、導入には費用がかかります。月額数万円のクラウドサービスでも、年間で見れば大きな投資です。この初期投資のハードルを下げるのが、デジタル化・AI導入補助金の役割なのです。
2026年度の主な変更点と継続内容
基本的な枠組みは変わらない
2026年度の補助金制度について、基本的には変わらないとのことでしたと中小企業庁の担当者は述べています。これは申請を検討している企業にとって朗報です。2025年度の制度を理解しておけば、2026年度もスムーズに対応できるでしょう。
具体的には、以下の5つの枠が2026年度も継続される見込みです。
- 通常枠
- インボイス枠(インボイス対応類型)
- インボイス枠(電子取引類型)
- セキュリティ対策推進枠
- 複数社連携IT導入枠
AI活用への配慮が強化される可能性
名称変更に伴い、AI活用ツールに関する要件が整理され、より導入しやすい制度に見直される可能性があります。たとえば、生成AIを使った業務効率化ツールや、自動応答システムなど、AI技術を活用したサービスへの補助が手厚くなることが期待されています。
また、申請時にAI導入の計画を明確に示すことで、加点評価を受けられる仕組みが追加される可能性もあります。これは推測の域を出ませんが、制度名称にわざわざ「AI」を冠した以上、何らかの優遇措置が設けられると考えるのが自然でしょう。
公式発表はいつ頃か
2025年12月現在、2026年度の詳細な公募要領はまだ公開されていません。過去の傾向から推測すると、2026年3月下旬から4月頃に公式発表があり、申請受付が開始されると見込まれます。
ただし、2025年度は事務局の変更や不正受給対策の強化により、申請開始が5月以降にずれ込みました。2026年度も同様の遅延が起こる可能性はゼロではありません。最新情報は、IT導入補助金公式サイトで随時確認することをおすすめします。
5つの申請枠を理解する
補助金を最大限活用するには、自社に合った枠を選ぶことが重要です。ここでは各枠の特徴と、どのような企業に向いているかを解説します。
通常枠:幅広い業務効率化に対応
対象となるツール 会計ソフト、顧客管理システム、在庫管理ツール、勤怠管理システムなど、業務プロセスをデジタル化するソフトウェアが対象です。クラウド利用料は最大2年分まで補助されます。
補助率と補助額
- 補助率:1/2(中小企業)、2/3(最低賃金近傍の事業者)
- 補助額:5万円〜450万円
「最低賃金近傍の事業者」とは、従業員の30%以上が最低賃金+50円以内で雇用されている企業を指します。該当する場合、補助率が2/3に引き上げられるため、自己負担を大幅に減らせます。
注意すべきポイント 150万円以上の補助を受ける場合、4つ以上のプロセス(業務工程)をカバーするツールが必要です。さらに、賃上げ目標の達成が求められます。初めて申請する企業は、補助額を150万円未満に抑えた方が申請のハードルが低くなります。
インボイス枠(インボイス対応類型):会計・受発注・決済に特化
対象となるツール インボイス制度に対応した会計ソフト、受発注システム、決済ソフトが対象です。特筆すべきは、ソフトウェアと合わせて、パソコンやタブレット、POSレジなどのハードウェアも補助対象になる点です。
補助率と補助額
- ソフトウェア:中小企業3/4、小規模事業者4/5(50万円以下)、2/3(50万円超〜350万円)
- ハードウェア:1/2(PC・タブレットは10万円まで、POSレジは20万円まで)
活用例 たとえば、会計ソフトの年間利用料が20万円、パソコン2台で20万円の場合、合計40万円の導入費用に対して補助を受けられます。ソフトウェアは3/4補助(15万円)、ハードウェアは1/2補助(10万円)で、合計25万円が補助されます。自己負担は15万円で済む計算です。
重要な制限事項 会計、受発注、決済の機能以外は補助対象外です。たとえば、会計ソフトに付随する経費精算機能の従量課金部分は対象にならないため、注意が必要です。従業員数が多い企業では、通常枠の方が有利なケースもあります。
インボイス枠(電子取引類型):商流全体のデジタル化
対象となる企業 発注側の企業が、取引先(受注側)にも使ってもらう受発注システムを導入する場合に利用できます。商流単位でデジタル化を進めたい企業向けの枠です。
補助率と補助額
- 補助率:中小企業2/3、その他事業者1/2
- 補助額:上限350万円(下限なし)
補助対象経費の計算方法 注意が必要なのは、全額が補助対象にならない点です。受注側のアカウント数のうち、中小企業が使用する分だけが補助対象になります。
具体例で考えてみましょう。アカウントを100契約し、自社で60使い、取引先に40渡すとします。この40のうち10が中小企業だった場合、10/40、つまり1/4が補助対象経費です。月10万円×2年間=240万円かかったとすると、240万円×1/4=60万円が補助対象となります。
セキュリティ対策推進枠:サイバー攻撃からビジネスを守る
対象となるサービス 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービスが対象です。サービス利用料は最大2年分まで補助されます。
補助率と補助額
- 補助率:中小企業1/2、小規模事業者2/3
- 補助額:5万円〜150万円
なぜセキュリティ対策が重要なのか デジタル化を進めるほど、サイバー攻撃のリスクも高まります。ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)による被害は年々増加しており、中小企業も決して無関係ではありません。
実際、弊社にご相談いただく企業様の中にも「取引先から情報セキュリティ対策の証明を求められた」というケースが増えています。補助金を活用してセキュリティ対策を強化することは、ビジネスの信頼性を高めることにもつながります。
複数社連携IT導入枠:地域や業界全体でデジタル化
対象となる取り組み サプライチェーンや商店街など、複数の企業が連携してITツールを導入する場合に利用できます。地域の商工会議所や業界団体が音頭を取るケースが多い枠です。
補助率と補助額
- 基盤導入経費:中小企業3/4〜4/5、小規模事業者2/3
- 消費動向等分析経費:2/3
- その他経費(事務費、専門家費):2/3
個別企業での申請とは異なり、複数社で連携するため、取りまとめに時間がかかります。ただし、補助率が高く設定されているため、地域全体でデジタル化を進めたい場合には有力な選択肢です。
補助金を活用する前に押さえておくべきこと
交付決定前の契約は対象外
補助金申請で最も多い失敗が、「交付決定前に契約してしまう」ことです。申請はしたものの結果が出る前にツールを導入してしまうと、たとえ採択されても補助金は受け取れません。
正しい流れは以下の通りです。
- 申請書を提出
- 審査(1〜2ヶ月程度)
- 交付決定通知を受け取る
- ITツールの契約・発注
- 導入・支払い
- 実績報告を提出
- 補助金が振り込まれる
特に注意したいのは、無料トライアルです。無料期間中であっても、正式契約の手続きを進めてしまうと、交付決定前の契約とみなされる可能性があります。
IT導入支援事業者との連携が必須
補助金の申請は、企業が単独で行うものではありません。必ず「IT導入支援事業者」と共同で申請する必要があります。
IT導入支援事業者とは、補助金事務局に登録された企業で、ITツールの提供だけでなく、申請書類の作成支援や導入後のサポートも担います。株式会社ドラマもIT導入支援事業者として登録しており、これまで多くの企業様の申請をお手伝いしてきました。
支援事業者を選ぶ際は、以下の点を確認しましょう。
- 申請実績が豊富か
- サイバーセキュリティお助け隊サービスを扱っているか(加点対象になるため)
- 申請書の「作文」部分のアドバイスが的確か
- 導入後のサポート体制が整っているか
事前準備で差がつく3つのステップ
ステップ1:gBizIDプライムのアカウント取得 補助金申請には、「gBizIDプライム」というアカウントが必要です。取得には2〜3週間かかるため、早めに準備しておきましょう。gBizID公式サイトから申請できます。
ステップ2:SECURITY ACTIONの宣言 情報セキュリティ対策に取り組むことを宣言する制度です。IPA公式サイトから無料で宣言でき、申請の必須要件となっています。
ステップ3:みらデジ経営チェックの実施 自社のデジタル化の現状を診断するツールです。数分で完了するため、申請前に済ませておきましょう。
申請で失敗しないための実践的なアドバイス
255文字の作文が採択を左右する
申請書には、「ITツールを導入することで、どのように生産性が向上するのか」を説明する欄があります。最大255文字という制限の中で、審査員に伝わる文章を書くことが採択の鍵です。
避けるべき表現
- 「DXを推進します」→抽象的で何をするのか分からない
- 「全体的な生産性を向上します」→具体性がない
- 「業務を効率化します」→どう効率化するのか不明
良い表現の例 「現在、請求書の処理に月40時間を費やしているが、AI-OCRを導入することで手入力作業を80%削減し、月32時間の工数削減を実現する。削減した時間を新規顧客開拓に充てることで、売上10%増を目指す」
このように、現状の課題、導入するツール、具体的な効果を数字で示すことが重要です。
加点を狙うためのポイント
賃上げ宣言をする 給与を引き上げる計画を示すことで、加点評価を受けられます。ただし、通常枠で150万円以上の補助を受ける場合、賃上げが達成できないと補助金の返還を求められる可能性があるため、慎重に判断しましょう。
事業場内最低賃金(社内で最も時給が低い人)を基準に、地域別最低賃金+30円以上を3年間維持すると宣言すれば加点されます。さらに+50円以上なら、通常枠で150万円未満の申請の場合、追加の加点があります。
サイバーセキュリティお助け隊サービスを導入する 申請するツールと一緒に、IPAが認定したセキュリティサービスを導入すると、加点評価を受けられます。株式会社ドラマでは、複数のセキュリティサービスを取り扱っているため、申請時にご提案可能です。
生産性向上計画を具体的に立てる 生産性の向上率は3%以上が求められますが、審査では向上率の高さも評価されます。無理のない範囲で、できるだけ具体的な数値目標を設定しましょう。
不採択になりやすいパターン
過去の事例から、不採択になりやすいケースをご紹介します。
パターン1:業績に見合わない申請 資本金100万円、赤字が続いている企業が、いきなり300万円のシステム導入を申請すると、審査で疑問を持たれます。企業規模や財務状況に応じた、現実的な投資計画を立てましょう。
パターン2:不釣り合いな役務費用 たとえば、年額8万円のクラウドツールに対して、保守サポート費用が年間60万円というのは、バランスが取れていません。ITツールの価格と、付随する役務費用の割合が適切かどうかは、審査で厳しくチェックされます。
パターン3:作文が抽象的すぎる 「様々な要素が複雑に絡み合い、多角的な観点から検討することが重要」といった、何も言っていないに等しい文章では採択されません。具体的な課題と解決策を明示しましょう。
補助金申請をスムーズに進めるためのサポート体制
株式会社ドラマができること
株式会社ドラマは、IT導入補助金の支援事業者として、以下のようなサポートを提供しています。
申請前の相談 どの枠が自社に適しているか、どのツールを選ぶべきか、補助金額はいくらになるかなど、申請前の疑問にお答えします。京都を拠点としながらも、全国の企業様からのご相談に対応可能です。
申請書類の作成支援 採択率を高めるための「作文」のアドバイスや、生産性向上計画の策定をサポートします。これまでの実績をもとに、審査で評価されるポイントをお伝えします。
導入後の運用サポート 補助金でツールを導入したものの、使いこなせずに宝の持ち腐れになってしまう企業も少なくありません。株式会社ドラマでは、導入後の操作研修や、運用の定着支援も行っています。
幅広いITツールの取り扱い GoogleWorkspace、Microsoft365、kintone、マネーフォワード、freee、楽楽精算など、100を超えるクラウドツールを取り扱っています。企業の課題に合わせて、最適なツールをご提案します。
2026年度の申請に向けて今できること
正式な公募開始は2026年春頃と予想されますが、今から準備を始めることで、スムーズな申請が可能になります。
今すぐできる準備
- gBizIDプライムのアカウントを取得する
- SECURITY ACTIONの宣言を完了する
- 自社の業務課題を洗い出す
- 導入したいツールの候補を絞る
- IT導入支援事業者に相談する
特に、業務課題の洗い出しは時間がかかります。「なんとなく効率が悪い」というレベルではなく、「請求書処理に月40時間かかっている」といった具体的な数字で把握することが重要です。
デジタル化・AI導入補助金は、中小企業がデジタル技術を取り入れ、生産性を高めるための強力な支援制度です。名称が変わっても、その目的は変わりません。業務の効率化、コスト削減、そして持続的な成長を実現するために、補助金を賢く活用しましょう。
株式会社ドラマは、京都から全国の企業様のデジタル化を支援しています。補助金の申請に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。あなたのビジネスの「ドラマ」を、私たちと一緒にカタチにしていきましょう。
お問い合わせ 株式会社ドラマ 電話:075-585-5352(受付時間:平日10:00〜19:00) お問い合わせフォーム:https://drama.co.jp/contact/ LINE:https://lin.ee/9XL7gax